毎月レポート

18.7.01

現代ならではの市場です。「物忘れ」をカバーするための商品やサービス。

 地名や人の名前、漢字、物を置いた場所、約束の時間や場所、いま自分が何をするためにここに来たのか……年齢を重ねるにつれて「物忘れ」がひどくなり、会話の中でも“あれ”や“それ”ばかりになってしまうのは誰にでも起こりうる症状です。中高年に多いのは当然ですが、近年、20~30代の若い世代でも「物忘れ」を自覚する人が増えているといいます。

 

 そんな背景もあり、物忘れに悩む人の“お助け”商品やサービスの需要が、ここにきて急速に高まっています。

 代表的なアイテムが、携帯やキー、財布、TVリモコン、自転車などに取り付けて場所を探し出す「忘れ物防止タグ」の類。2016年に上陸した、米国発の「TrackR(トラッカール)」は、直径3cmほどの小型電子タグがスマホからの操作で探し物の位置を音と光で知らせるIoT製品で、世界的なヒットとなっています。昨年、カバン大手の[エース]が、同システムを搭載したキャリーケースを発売して話題となりました。

 忘れ物の“定番”といえば、家の鍵。スマホが鍵になる[キュリオ]の「スマートロック」は、玄関ドアに取り付けるだけで工事不要。スマホ操作で施錠/解錠ができます。

 恋人同士や夫婦間の記念日などを、つい忘れてしまうという人には、スマホアプリ「カップルズ」がおすすめ。二人で登録し、“忘れてはいけない日”を入力すると、カウントダウンや通知をしてくれるというもの。

 肉体を鍛えるジムがあるなら、脳を鍛えるジムがあってもいいと、昨年オープンしたのが、脳トレーニングジム「ブレインフィットネス」(東京・恵比寿)。認知機能の維持・改善や認知症の発症リスクを減らすことを主眼に、脳を鍛える、あるいは休めるトレーニングを行っています。

 また、食品で物忘れをカバーしようと、[ロッテ]から昨年発売されたのは、「歯につきにくいガム 記憶力を維持するタイプ」という機能性表示食品。中高年の記憶力維持の効果が見込めるという“イチョウ葉”の抽出物が配合されています。

 「物忘れ」と「認知症」は違います。物忘れは、一度覚えた記憶を部分的に取り出せなくなる状態のことで、認知症は、記憶自体がすっぽりなくなることです。物忘れしない人はいませんし、ヒントさえあれば思い出すことができるレベルなら、心配には及びません。がんばって忘れないことを目指すのではなく、忘れにくくするための商品やサービスを活用するのが得策です。

 記憶力低下への漠然とした不安感が、昔にはなかった、現代ならではの新種の消費を動かし始めているのは確かなようです。

【参考】
TrackR https://www.thetrackr.com/
キュリオ https://qrio.me/
カップルズ https://couples.lv/
ブレインフィットネス https://brain-fitness.jp/
ロッテ http://www.lotte.co.jp/
日経MJ(2018年2月21日付)




日本名物「自動販売機」が、街角から消えていく?

 2000年以降続いている、消費者の“飲料自販機(以下、自販機)離れ”の傾向に歯止めがかかりません。設置台数は、年々右肩下がり。自販機の前に立って飲み物を購入するという行為自体が減ってきているようです。背景には、品ぞろえが豊富で本格的なドリップコーヒー販売が定着したコンビニの台頭、安価なスーパーやドラッグストアなどとの価格競争、ネット通販でのまとめ買い、東日本大震災以降の“マイ水筒”ブーム、さらには2008年のタスポ(たばこ自販機成人識別システム)導入でたばこ需要が減退。たばこ自販機での購入を敬遠した客がコンビニなどに流れ、併設されている飲料自販機での“ついで買い”が減ってしまったことも一因に。

 飲料メーカーにとって、定価販売が原則の自販機は、利益率が高い、まさに“ドル箱”。特に大手の場合、自販機を自社で一括運営しているため、利益貢献度も高く、設置側に払う手数料を除けば、残りの利益を自社で総取りできるという魅力が。品ぞろえもメーカーの思い通りにでき、一般の商品のように小売店への販促費や割戻金といった経費も必要ありません。自販機はいわば、“小さな直営店”という位置付けなのです。

 一時は、自販機こそ最も力を入れたい販路とばかり、各社が競って設置台数を増やす“陣取り合戦”を繰り広げていました。しかし、徐々に1台当たりの利益率重視の傾向が潮流となり、いまでは量から質へ、台数至上主義からの転換が図られています。飲料各社では、新規の設置に慎重になるのはもちろん、不採算自販機の撤去の動きが急速に進んでいるのが現状です。これによって同時に、新たな立地の奪い合いが始まっています。主戦場と目されるのは、比較的安定した売り上げが見込めるオフィスや工場、公共機関といった“屋内”。不特定の顧客を取り合う路面設置より、確実な固定客を見込めるという算段です。

 新規の設置台数増が見込めない自販機市場。定価販売での収益が魅力だったはずの自販機ビジネスは、皮肉にも、そのメリットがハンデとなって足を引っ張る結果となってしまったようです。今後、自販機を巡っては、新たな利益追求の消耗戦が展開されそうです。

【参考】
日本自動販売システム機械工業会  https://www.jvma.or.jp/
朝日新聞(2018年2月6日付)



「ギルトフリー」だから、もうスイーツなんか怖くない。

 小麦を使った甘いお菓子は、高カロリーで糖質たっぷり。ダイエット中の人はもちろん、少しでも健康に留意している人なら、“食べたら太るかも”“体に悪そう”といった後ろめたさ、罪悪感(=guilt)が頭をよぎります。それを感じない(=free)、あるいは軽減できるようなフード類が「ギルトフリー」と呼ばれています。

 ギルトフリー食品とは、低カロリーで無添加、低脂肪、小麦不使用、動物性たんぱく質不使用、砂糖不使用といった特徴を持った食品のことを指します。一見、地味でマズそうと思われがちですが、“良薬、口に苦し”の常識を覆す美味しさと見た目が、広く支持されている理由です。

 その代表格が、ナッツとドライフルーツをボール状に固めた「ブリスボール」と呼ばれるスイーツ。オーガニック大国、オーストラリア発祥で、“イチジク×くるみ”“ゆず×クコの実”など、素材そのものの甘みを楽しみます。日本では2016年、ブリスボール専門店[FOOD JEWELRY]がオープンしました。

 海外のセレブたちがこぞって愛用中と話題になっているのが、「GHEE(ギー)」という油。発酵無塩バターから水分やたんぱく質を取り除いた純粋なオイルで、インドなどで古くから使われていました。脂肪燃焼をサポートしてくれるほか、マッサージオイルとしての効果も。

 モデルやアスリートたちが注目しているのが、カンガルーの肉「ルーミート」。日本ではまだ馴染みがない食材ですが、クセもなく食べやすい味。鶏肉と比べても脂質・カロリーが断然少なく、高たんばく、高鉄分、低コレステロールが特徴です。

 定期的にギルトフリーのお菓子が届くサービスもあります。それが[snaq.me(スナックミー)]。有機ドライフルーツを使用し、チョコではないのにチョコの味がする「ショコラ きなこ」など、約150種類の中から8種のお菓子を詰め合わせた「ギルトフリースナックBOX」が毎月、または隔週で届くシステム。

 居酒屋にもギルトフリーの波が押し寄せています。鍋専門店「ゆるり屋」(際コーポレーション)では、昨秋から低カロリー、低糖質、コレステロールゼロの植物性飲料“アーモンドミルク”を使った鍋を5種類そろえました。期間限定メニューとしてスタートしましたが、好評のため定番メニューに格上げされるほどの人気です。

 “体にいい”をキーワードに、食の新たなトレンドになりそうな「ギルトフリー」。外食店のメニューやコンビニの品ぞろえなどに、急速にギルトフリー化が波及している現状を目の当たりにすると、やがて“食品=ギルトフリー”が当たり前となる日が遠くないことを予感させてくれます。

【参考】
FOOD JEWELRY http://food-jewelry.com/
snaq.me https://snaq.me/
際コーポレーション株式会社  https://www.kiwa-group.co.jp/
日経MJ(2018年2月28日付/同3月28日付)




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